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コロナウイルスと地方創生

2020.9.2

■新型コロナウィルスが東京圏からの人口流失を促進し地方創生を加速させる?

 

 新型コロナウィルスによる感染症のひろがりが報道されてからすでに約7か月が過ぎようとしています。以来、その社会、経済をはじめとする人間生活への影響が甚大であり、とくに医療、飲食、観光、交通などの業界への迅速な対応が求められています。

 

また、こうした感染症がひきおこした様々な災害は、人間生活すべてを一変させるだろうとの風潮も高まっています。新型ウィルスと人間とのつきあい方を変え、新しい生活様式への転換が進むものと考えられます。それだけでなく、感染症対策を講じるなかで、様々な社会構造に存在する不備や不具合にあらためて気づかされ、その修復、変革が喫緊の課題となっています。行政や教育におけるデジタル化の遅れ、東京圏(東京都+となり合う3県)の異常ともいえる人口密集などはその典型例でしょう。

 

 政府も今年度の「骨太の方針」で、デジタル化を中心に社会構造の変革を急ぐことを強調しています。一例として、文科省のGIGAスクール構想に取り上げられている施策、小中学生への端末機器一人一台配布、学校の無線LAN化、およびプログラミング教育(デジタル教育)の今年度中の実現をあげることができます。コロナ禍によって対策が加速されるのは皮肉なことですが、教育のデジタル化は、教育の質、例えば問題解決能力や創造力なども向上させるといわれていますので、ぜひとも期限通りに実行してほしいものです。

 

 新型コロナウィルスの感染防止には部屋の換気とともに、人との物理的距離の確保、つまり人との濃厚接触の回避が必須であると認識されています。毎日の報道から、感染者が多く出ているのは、東京圏や大阪といった混雑がおきやすいところ、あるいは人口の多いところと一致しています。緊急事態宣言解除後も国民のあいだには長距離の移動を自粛するムードがありますが、生活を営むうえでは、密集を避けられる郊外へ移住したい欲求をいだく人が多いのではないでしょうか?

 

 人との接触を避けるために、在宅でテレワーク、あるいはオンライン授業をする人がふえたことも今回のコロナ禍でもたらされた大きな変化です。自宅で仕事ができ、授業が受けられるのであれば、人口密度の高い東京圏に住む必要はなく、郊外に移住して必要なときだけ出勤、あるいは登校するといった生活ができるわけです。そのような生き方を希望する人が増えているとの報道があります。東京圏に住むことの利点は、通勤、通学だけでなく、関係する企業や機関へ訪問する利便性や情報収集のしやすさなどもあります。しかし、それもインターネットへ接続できる環境さえあれば、ビデオ会議、各種情報収集ツールやSNSなどで代替することができます。コロナ禍が去ったあとは、東京圏からの地方移住が加速するかもしれません。

 

 最近総務省統計局から、20204月の東京圏の転入超過数(転入者から転出者を差し引いた人数)は14,497人で、前年同月の27,500人に比べてほぼ半減しているとの発表がありました(住民基本台帳人口移動報告[20204月分])。上述した動きが既に起き始めていることが判ります。ただ、この変化は、47日に出された緊急事態宣言の影響で、大学進学目的の転入者数と就職・転職に伴う転入者数が減少したためと分析されています。いずれも自宅に居ながらオンラインによる授業や研修が受けられたためと推察されます。しかし、こうした状況は一過性のものではなく、来年度以降も継続する動きであり、東京圏へ通勤、通学する人たちへも拡大していくことが予想されます。

 

 こうした動向を察知して、地方では「より住みやすいまち、選ばれるまち」の創生に向けて体制や構造を変えていくことが求められています。今のうちに構想を練り、政府の助成を受けるなどして対応を急ぐべきです。市民の意欲や気運を醸成、増長していくことも必要でしょう。

 

 

以上