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地方創生の目指すところは人口の東京一極集中を抑え地方への人の流れをつくること

2020.8.28

■地方創生の目指すところは人口の東京一極集中を抑え地方への人の流れをつくること

  「地方創生」という言葉を耳にしたことの無い人はほとんどいないと思います。しかし、政府が掲げるこの地方創生という言葉のもつ意味を正しく知る人は案外少ないのではないでしょうか。「創生」ですので、何か新しいことを生み出すという意味合いを含んでいます。ですから、単なる地方の活性化とか復興ということでないことはわかります。政府が地方自治体に1億円というお金を給付して自由に活用させた「ふるさと創生事業」(バブル末期の竹下政権で施行された地域振興目的の政策)を思い浮かべる人も多いかもしれません。地方創生には、地方への予算措置を通じて地域の産業振興を加速するイメージがあります。

 

実は、「地方創生」は2013年に打ち出された安倍政権の目玉とも言える経済政策の一つです。その狙いは、少子化による人口減少と、それにともなう景気低迷を抜本的に解決しようとするものです。人口の東京圏への過度な集中を抑制し、地方への人口移動を促進して地方から経済を活性化させようとすることが政策立案の原点であると理解できます。この考え方は201412月、第1期(20152019年度)の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」と呼ばれる施策につながります。その中の主要目標として、東京圏からの人口流出と東京圏への人口流入を差し引きゼロにまで抑えるという数値ターゲットが掲げられました(2014年度の人口流出約11万人)。

 

 ではこの第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の具体的内容と成果はどうだったのでしょうか? 201912月に同戦略の第2期バージョン[1]が策定されており、冒頭に第1期の検証結果が述べられていますので、それを参照してみます。以下は第1期の目標部分の引用です。

第1期「総合戦略」では、「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「地方への新しいひとの流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」及び「時代に合った地域をつくり、安心なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」を4つの基本目標とし、取組を進めてきた。

 

 

 このように第1期では、「地方へのひとの流れをつくること」を基本的な目標にしていることが確認できます。この目標は各都道府県、各市町村にも周知され、様々な施策パッケージの投入によって前進が図られたとされています。

 

 ところが、肝心かなめの人口流入出はどうなったかというと、「地方から東京圏への転入超過数136千人(2018年)」ということで、目標未達、というより目標に対して逆行する動きであることが判明しています。実際、私たち地方に住む者にとって、周りの地域の人口が徐々に減少しつつあり、その減少分の大半は東京圏への転出であるという事情が実感できます。政府自体も中央省庁の地方移転を検討しましたが、残念ながらこれは文化庁の京都移転のみという結果でした。

 

 以上をまとめますと、「地方創生」とは人口問題に根差したもので東京圏への人口一極集中を抑制し、地方への人の流れを促進する施策であることがわかりました。しかし、その施策を推進するための「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の第1期(20152019)では、残念ながら目標未達という結果でした。

 

 次のブログでは、こうした第一期の反省に基づいて制定された第2期の「まち・ひと・しごと創生総合戦略」についてみていきたいと思います。

 

【参考情報】

[1] 第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」

令和元年1220

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/info/pdf/r1-12-20-senryaku.pdf