「我がひたちなか市は県内で3位、全国で72位という結果です。」
「住みやすいまち」の全国ランキング情報を紹介
ネット上の各種ランキングは世の中の状況を知るうえで参考になることが多いのですが、どのようなデータ収集方法による結果なのかはっきり示しておらず誤解を生じる場合があります。「住みやすいまち」についても同様で、どのような評価指標に基づいたランキングなのか疑問を持たざるを得ないことがよくあります。ここで紹介する情報は、「全国のビジネスパーソン(有職者=働く世代)を対象に、実際に住んでいる/直近で住んでいたまち(全国の市および東京23区)に対する『住みよさ』についてインターネット調査」した結果であるとしており、対象者がビジネスパーソンに限定されている問題はありますが、対象者数が全国2万2千人あまりと多いこと、評価項目(末尾の表1参照)が比較的詳細かつ適切と思えることなど、信頼できると考えられます。以下にリンク先を示します。この記事では、トップ10自治体を精査していますが、全国トップ200、地域別、県庁所在地ランキングなど興味深い結果も掲載されています。
[1]「住みよい街」TOP10自治体を分析
上位の自治体はどの項目が高く評価されたのか
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/071000015/073000004/
茨城県内の主要都市のランキングは?
ではまず茨城県の状況を見てみましょう。「住みよいまち2019― 総合トップ200」の中に次の5市が入っています。最初の数字が順位、都市名の後の数字は評価で得られた偏差値、カッコ内はサンプル数です。
19 つくば市 65.8(133)
21 守谷市 65.4(42)
72 ひたちなか市 60.0(43)
164 牛久市 56.0(33)
187 古河市 54.9(24)
なんと我がひたちなか市は県内で3位、全国で72位という結果です。水戸市や土浦市といった県内では有名な年を抑えてのランク入りです。つくば市と守谷市が上位なのは、おそらくつくばエクスプレス(TX)沿線で首都圏への交通利便性に優れることが理由と考えられます。ちなみに、水戸市は県庁所在地の中で全国38位となっています。
都道府県庁所在地別ランキング
38 水戸市 53.9(58)
ひたちなか市の評価結果を再確認してみる
ひたちなか市のこのランキングをどう見るべきかは意見の分かれるところかもしれません。「箸にも棒にもかからない」ということはないとしても、上には上がある、安心してはいられない、といえるのではないでしょうか。他都市と競ってこのランキング上位を獲得しようとすることは本旨ではありませんが、「より住みやすいまち」を目指すにはどのような視点で取り組むべきかを知ることは重要です。残念ながら本記事に下位評価都市の結果詳細は掲載されていません。そこで、末尾表1の評価基準を検討してみます。
表1によれば、「住みよいまちの評価基準」として、8つの分野、38の評価項目を指定しています。これらが「住みよいまち」のための基礎的な必要条件と考えられるでしょう。表1の最右列に筆者らの独断による「自己評価」を示します。他都市より優れている項目に○、劣っている項目に▲、どちらでもない項目に―を付してあります。その結果、「治安がよい」、「自然災害が少ない」、「気候が穏やか」、「自然環境が豊か「、」街が静か」などはプラス要因ですが、「街の歴史・伝統などに関わる文化資源が豊富」、「公共交通機関が充実している」、「街に活気がある」などはマイナス要因であり、改善が必要と考えられます。また、―評価である他の多数の項目について、具体的対応策が求められます。
なお評価38項目は、住みやすさのランク付けに概ね適合する内容ですが、今後はデジタル化やICT環境の普及度など時代に合わせた項目、および自治体の財政や行政サービスなどの定量的データを採用するなど評価項目の深掘りが必要なことを指摘しておきます。
上位都市と比較してみよう
上位10都市の状況を見てみましょう。東京特別区を除くとほとんどが東京および大阪近郊の歳です。
総合1位 文京区(東京都)
総合2位 西宮市(兵庫県)
総合3位 府中市(東京都)
総合4位 印西市(千葉県)
総合5位 浦安市(千葉県)
総合6位 武蔵野市(東京都)
総合7位 千代田区(東京都)
総合8位 港区(東京都)
総合9位 芦屋市(兵庫県)
総合10位 福岡市(福岡県)
評価の詳細について少し見てみます。甲子園で有名な西宮市は、大阪市と神戸市の間にあり、JR、阪急、阪神の3つの鉄道が走る利便性に優れたまちです(人口約48万7500人)。「街の活力」分野の「地方自治に対する住民の意識が高い」(2位)、「子供や若者が多い」(5位)、「街に愛着がある」(5位)が特長で、「生活インフラ」分野の5項目もいずれも総合20位以内、さらに病院や診療所、小児科や産婦人科の多さも高評価です。しかし、「自然災害が少ない」(169位)、「自然環境が豊か」(151位)、「物価が安い」(325位)、「保育所、幼稚園、認定こども園などが充実している/入りやすい」(183位)、「公共料金が安い」(253位)などが低い評価です。
総合4位の印西市は、千葉ニュータウンで知られる千葉県北部の都市です(人口約10万3000人)。「子供や若者が多い」、「子どもを遊ばせる場所が多
い」、「治安がよい」、「街が静か」、「物価が安い」など、38項目中10項目で総合1位という点が注目されます。一方、「職住接近が可能である」、(339位)、「地域で仕事を見つけやすい」(252位)、「病院や診療所が多い」(208位)、「介護施設が多い/介護サービスを受けやすい」(209位)、「繁華街へのアクセスがよい」(320位)などと、総合200位以下の項目も少なくないという特質があります。
総合順位が上位でも、全ての評価項目について高得点(上位)であるわけでなく、都市ごとに優劣のつく項目をもち、それぞれに固有のカラーがあるということです。それが都市ごとに魅力、住みやすさをかもし出しているといえるでしょう。まちづくりにおいて、評価項目すべてを俯瞰し、低評価項目から優先順位をつけて改善していくことが求められます。しかし、その都市の良さ、特長をさらに伸ばし魅力度を高めていくことも大切と思います。何か尖った良さがあるというのも人をひきつける力があるものです。
評価項目・基準の選定には注意が必要
上述した都市ランキングは、人間の嗜好や情緒による感性評価といえます。従って既に指摘したように、信頼できる統計データなどによる客観評価を組み込むなどの対応が必要です。一例として以下の情報を紹介します。
[2]茨城県ひたちなか市|自治体別住みよさランキング|三菱UFJ不動産販売
https://www.sumai1.com/useful/townranking/town_08221/
結果の一部を以下に抜粋します。茨城県内32、全国812の都市(含む東京特別区)の順位です。
住みよさランキング総合評価 茨城県内7位全国329位
項目別順位:
安心度 茨城県内31位 全国720位
利便度 茨城県内5位 全国160位
快適度 茨城県内4位 全国310位
富裕度 茨城県内6位 全国149位
1人当たり都市公園面積 21.0m2 全国140位(全国平均:12.1m2、H29)
前述[1]のデータ(全国72位)と比べかなり残念な結果です。理由は明確ではありませんが、とくに安心度の評価が低く実感と異なっています。安心度に対する事実誤認、偏見の可能性があります。一つの見方、尺度かもしれませんが、データ分析、解釈は注意深く実施する必要があります。
まとめ
「住みよいまち」ランキングデータを紹介し、今後の「まちづくり」に向けた現状認識と方向性について議論してきました。
「住みやすいまち」をつくろうとする試みは、多くの市民に理解を得ながら進める必要がありますが、「住みやすい」とはどういうことなのか漠然としていることは否めません。住みやすさは生活の満足度が高いこと、ひいては幸せな生き方につながる感覚ですが、人それぞれ異なります。ここで示してきた住みやすさの評価基準(表1)は、そうした曖昧さや多様性を低減し、具体的な対応策を考える際の有用なものさしになりえます。今後の取組みに活かしていきたいと思います。
表1.住みよいまちの評価項目[1]
8つの分野 |
評価項目 |
自己評価 |
安心・安全
|
治安がよい |
○ |
自然災害が少ない |
○ |
|
歩道など交通安全に配慮した道路が整備されている |
― |
|
防犯対策(交番/街灯/防犯カメラ/住民による見守りなど)が整っている |
― |
|
快適な暮らし
|
気候が穏やか |
○ |
自然環境が豊か |
○ |
|
公園が多い |
― |
|
街が静か |
○ |
|
街の歴史・伝統などに関わる文化資源が豊富 |
▲ |
|
生活の利便性
|
職住接近が可能である |
― |
繁華街へのアクセスがよい |
― |
|
物価が安い |
― |
|
日常生活に必要な買い物がしやすい |
― |
|
生活インフラ
|
公共交通機関が充実している |
▲ |
便のよい幹線道路が整備されている |
― |
|
図書館や公民館など文化施設が充実している |
― |
|
生涯学習プログラムが充実している |
― |
|
住民が利用できる運動・スポーツ施設が充実している |
― |
|
医療・介護
|
病院や診療所が多い |
― |
小児科/産婦人科が多い |
― |
|
夜間・緊急医療体制が整っている |
― |
|
介護施設が多い/介護サービスを受けやすい |
― |
|
子育て
|
保育所、幼稚園、認定こども園などが充実している/入りやすい |
― |
教育機関が充実している |
― |
|
子ども向けの体育・文化活動が盛ん |
― |
|
自治体による出産・育児・子育て支援が充実している |
― |
|
子どもを遊ばせる場所が多い |
― |
|
自治体の運営
|
公共料金が安い |
― |
行政からの情報発信が充実している |
― |
|
外部(住民以外)から見た街のイメージがよい |
― |
|
多様な地域参加の機会がある |
― |
|
地域で仕事を見つけやすい |
― |
|
街の活力
|
街に活気がある |
▲ |
子供や若者が多い |
― |
|
いろいろな面白い人、魅力的な人が住んでいる |
― |
|
応援できる文化・スポーツ団体がある |
― |
|
地方自治に対する住民の意識が高い |
― |
|
街に愛着がある |
― |
表2.【参考】総合1~100位[1]
1 |
文京区(東京都) |
|
51 |
川越市(埼玉県) |
2 |
西宮市(兵庫県) |
52 |
中野区(東京都) |
|
3 |
府中市(東京都) |
52 |
立川市(東京都) |
|
4 |
印西市(千葉県) |
52 |
守山市(滋賀県) |
|
5 |
浦安市(千葉県) |
55 |
海老名市(神奈川県) |
|
6 |
武蔵野市(東京都) |
56 |
豊島区(東京都) |
|
7 |
千代田区(東京都) |
57 |
京都市(京都府) |
|
8 |
港区(東京都) |
58 |
千葉市(千葉県) |
|
9 |
芦屋市(兵庫県) |
58 |
練馬区(東京都) |
|
10 |
福岡市(福岡県) |
58 |
名古屋市(愛知県) |
|
11 |
中央区(東京都) |
61 |
安城市(愛知県) |
|
12 |
長久手市(愛知県) |
62 |
北九州市(福岡県) |
|
13 |
渋谷区(東京都) |
63 |
松山市(愛媛県) |
|
14 |
多摩市(東京都) |
64 |
京田辺市(京都府) |
|
15 |
藤沢市(神奈川県) |
64 |
長岡京市(京都府) |
|
16 |
世田谷区(東京都) |
64 |
野洲市(滋賀県) |
|
17 |
神戸市(兵庫県) |
67 |
春日井市(愛知県) |
|
18 |
さいたま市(埼玉県) |
67 |
豊田市(愛知県) |
|
19 |
つくば市(茨城県) |
69 |
豊橋市(愛知県) |
|
20 |
春日市(福岡県) |
69 |
豊中市(大阪府) |
|
21 |
札幌市(北海道) |
69 |
浦添市(沖縄県) |
|
21 |
守谷市(茨城県) |
72 |
ひたちなか市(茨城県) |
|
23 |
杉並区(東京都) |
72 |
伊丹市(兵庫県) |
|
24 |
品川区(東京都) |
72 |
山口市(山口県) |
|
25 |
茨木市(大阪府) |
75 |
墨田区(東京都) |
|
26 |
三鷹市(東京都) |
75 |
浜松市(静岡県) |
|
26 |
金沢市(石川県) |
75 |
塩尻市(長野県) |
|
26 |
大野城市(福岡県) |
75 |
大阪市(大阪府) |
|
29 |
宝塚市(兵庫県) |
75 |
栗東市(滋賀県) |
|
30 |
生駒市(奈良県) |
80 |
茅ヶ崎市(神奈川県) |
|
30 |
廿日市市(広島県) |
80 |
倉敷市(岡山県) |
|
32 |
目黒区(東京都) |
82 |
各務原市(岐阜県) |
|
33 |
調布市(東京都) |
83 |
佐野市(栃木県) |
|
34 |
平塚市(神奈川県) |
83 |
野々市市(石川県) |
|
35 |
松本市(長野県) |
83 |
草津市(滋賀県) |
|
36 |
江東区(東京都) |
83 |
広島市(広島県) |
|
37 |
横浜市(神奈川県) |
87 |
郡山市(福島県) |
|
37 |
箕面市(大阪府) |
87 |
静岡市(静岡県) |
|
37 |
明石市(兵庫県) |
87 |
佐賀市(佐賀県) |
|
37 |
那覇市(沖縄県) |
90 |
周南市(山口県) |
|
41 |
国立市(東京都) |
91 |
草加市(埼玉県) |
|
42 |
仙台市(宮城県) |
91 |
岐阜市(岐阜県) |
|
42 |
新宿区(東京都) |
91 |
上田市(長野県) |
|
42 |
台東区(東京都) |
91 |
豊川市(愛知県) |
|
45 |
吹田市(大阪府) |
95 |
柏市(千葉県) |
|
46 |
刈谷市(愛知県) |
95 |
町田市(東京都) |
|
47 |
流山市(千葉県) |
95 |
三島市(静岡県) |
|
48 |
稲城市(東京都) |
95 |
太宰府市(福岡県) |
|
49 |
高槻市(大阪府) |
99 |
千歳市(北海道) |
|
49 |
久留米市(福岡県) |
99 |
習志野市(千葉県) |
|
|
|
99 |
池田市(大阪府) |
以上
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