· 

人口減少問題をどう捉えるべきか?

 

 

 地方創生の肝は、東京圏への人口一極集中の緩和、および地方への人口分散であることを知りました。コロナ禍の結果として、人口密度の高い首都圏を避け地方移住する動きが見え始めているものの、地方創生の理想には程遠いというのが現状です。少子高齢化とともに人口減少問題への明確な回答が依然として見当たらない状況なのです。本稿では、そうした問題の根底にある、人口と経済との関連性について考えてみます。

 

ひたちなか市の人口

 

 ひたちなか市の総人口は155,689人で、茨城県内第4位、全国(特別区を除く)で第155位です(wikipedia)。ここで用いる総人口は、2020年(令

2年)101日に実施された国勢調査により得られた常住人口であり、「国勢調査人口」(国調人口)あるいは「法定人口」と呼ばれる数値です。

 参考のため、県内上位6都市の総人口を順位とともに以下に示します。

 

 表1. 茨城県内主要都市の総人口と順位

県内順位

全国順位

都市名

総人口(人)

1

80

水戸市

270,783

2

102

つくば市

226,963

3

126

日立市

185,054

4

155

ひたちなか市

155,689

5

173

古河市

140,946

6

174

土浦市

140,804

 

国内人口の将来予測

 

 2045年時点の日本の人口は1600万人程度となり、30年で2000万人以上減少するとの将来予測を、国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表しました。また同所は、「日本の地域別将来推計人口(平成30(2018)3月推計)」も発表し、2045年の市町村の人口ランキングを示しました。減少が著しく、消滅可能性のある市町村が出現するとの予想で衝撃を与えました。

 

2045年市町村将来推計人口ランキング

https://ecitizen.jp/Population/Ranking

 

これによると、ほとんどの市町村は人口減少し、地方都市では20%減少するというのが普通で50%以上という市町村も多いという厳しい状況であることが判ります。もちろん推計なので状況を変えることは可能であり、対応を考えていく必要があると結論されています。

 

 県内主要都市の推定総人口を抽出し、表2に示します。比較のため茨城県全体の人口はどうかというと、2015年に2,916,976人だったものが2045年には2,235,686人と681,290人の減少となる予想で、増減率は-23.4%となっています。

 

なお、人口推計は出生率、平均寿命、人口動態などに適当な将来数値を仮定して算出していますが、詳しく知りたい場合は以下が参考になります。

 

人口推計とはどのようなものですか。(内閣府)

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/sentaku/s3_1_7.html

 

 表2. 2045年の推定総人口、増減率

県内順位

全国順位

都市名

2045年総人口(人)

増減率(%)

1

92

つくば市

242,804

+7.0

2

93

水戸市

239,072

-11.7

3

184

ひたちなか市

124,378

-20.1

4

197

日立市

117,304

-36.6

5

205

古河市

109,663

-22.2

6

206

土浦市

108,758

-22.8

 

 表2によれば、つくば市を除く全ての都市で、大きく人口が減少することが判ります。表1と比較して、つくば市と水戸市、ひたちなか市と日立市の順位が逆転します。減少率は日立市が37%と高いこと、ひたちなか市は20%と高いものの、茨城県全体の値(23.4%)ほどではないことが示されます。

 

 参考のため、県内32市の人口増減率ランキングを末尾に掲載します。

 

人口増加率と経済成長率との関係

 

 人口減少の問題を考えるとき、最初に検討すべきことは経済との関係、つまり生活の豊かさへの影響でしょう。

 

低成長・カネ余りという新常態(平山賢一)

東京海上アセットマネジメント 執行役員運用本部長

プロのポートフォリオ 20201113

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66137520S0A111C2K15200/

 

この記事の中に、「人口増加率が高ければ、それだけ多くの消費需要や設備投資需要が生じるため、経済の拡大ペースは速まるはずです。有史以来の世界の人口増加率と経済成長率の関係を調べると、両者は概ね比例関係にあります。」と述べられています。人口増加率が高いことは、発展途上にある状態をも意味しますので、この表記は頷けます。この考え方は一般に受け入れられていると考えられます。逆に言えば、人口が減少傾向になれば経済成長は鈍化すると推測され、それが日本の経済の低迷、衰退の懸念材料と捉えられる要因になっていると思われます。では、海外に目を転じ、人口と経済の関係を調べてみましょう。

 

海外の状況

 

様々な統計データがありますが、以下の記事は判り易いので参考として取り上げます。

 

人口減少でも経済成長できるか?

https://bangking-yeah.com/2020/08/19/depopulation/

 

 リトアニア、エストニア、ハンガリー、ポーランドなど人口減少していても経済が大きく成長している国々が存在することが示されています。日本は人口増加が見込めないことを一つの理由にして海外展開、グローバル化を進めましたが、日本経済衰退の要因の全てを人口減少や少子高齢化のせいにもできない、と指摘されています。バブル崩壊後、経済成長が鈍化した原因については重要テーマですので、別に議論したいと思いますが、世界を見渡せば、人口減少という問題だけを深刻に捉える必要は無いと言えそうです。

 

 さらに次のような指摘もあります。

 

「人口が減ると経済はマイナス成長」は本当か

データが示すのは、それとは異なる姿だ

吉川 洋 : 立正大学経済学部教授

https://toyokeizai.net/articles/-/222706

 

 この記事の要点は、人口減少が経済成長を妨げ、下押しするという考えは日本の場合成立しないということです。

 

人口減少を悲観的に捉えるべきではない

 

 人口減少問題は現実に生じていますが、経済や暮らしの豊かさを劣化させる主要因ではないことを示してきました。ここではさらに、人口減少という現状をより前向きに捉えるべきという考え方を紹介します。

 

「人口減少社会は希望だ」京都大学広井教授が考える、成熟社会に生きる私たちのこれから

https://www.recruit.co.jp/meet_recruit/2020/04/depopulation.html

 

この記事の要点を以下に列記します。

・人口減少をネガティブにだけ考えるべきではない

・人口増加期は、「みんなで一致団結して経済的な豊かさを実現する」という成長の時代だったが、今の人口減少期はその後の成熟期にある。山頂にたどり着いているので、より上(経済的豊かさ)を目指すのでなく、もっと自由に生きるべき時代と言える。

・例えば、イギリス・フランス・イタリアはいずれも人口6,000万人程度で、ドイツは8,000万人。国土の面積が異なるため単純比較はできないものの、日本が1億人を割るから国が維持できなくなるとは必ずしも言えない。

・「多様性」が重要とよく言われるが、その本当の大切さを知らない。その理由は、人口増加時代に一本道を上ることで生まれた「同調圧力」、「空気を読む」、「忖度」などという価値観から離れられていないから。

真に多様性を認め合えるためには、集団の枠を越えて人と人が個人として繋がる、家族や学校・会社といった既存の集団だけでない、新しいコミュニティがどんどん生まれることが大切。人生100年と言っても死ぬまで労働に縛られたり、会社人間という発想にとらわれず、ライフステージの移り変わりとともに各自がいろんな活動に進んでいくようなライフスタイルがもっと広がっても良い。

・東京が群を抜いて出生率が低い、つまり、日本のGDPを牽引しているはずの東京が、中長期的には労働人口を減らしGDPを下げる要因になっている。これが今後、都市集中型ではなく、地方分散型が望ましいと導き出された根拠の一つ。格差・健康・幸福度といった観点でも地方分散型の方が優位との(AIによる)予測もある。

 

まとめ

 

 ひたちなか市を含む国内地方自治体のほとんどが人口減少していくとの予測を、近隣の自治体の具体例とともに紹介しました。こうした傾向は、出生率の特段の増加、海外からの移民受け入れなどが無い限り現実のものとなるでしょう。しかしながら、人口減少そのものが経済や暮らしの停滞の直接要因ではない、との事実や論説があり、適切な対応策が講じられれば悲観的になることはないことが判りました。さらに、人口減少をポジティブに捉え、人と人のつながり、コミュニティの存在を大切にする、人間性をより豊かにするライフスタイルへシフトするなど、人口増加期に埋め込まれた価値観を変えていくことの大切さに触れました。「住みよいまちづくり」を推進するうえで心に留めておくべき重要事項と考えます。

 

 

【参考】県内32市の人口増減率ランキング

2045年と2015年との比較、減少率の高い順)

 

1          稲敷市             -46.1

2          常陸太田市      -45.3

3          行方市             -44.2

4          北茨城市          -42.9

5          桜川市             -42.7

6          高萩市             -40.3

7          常陸大宮市      -38.5

8          潮来市             -37.5

9          日立市             -36.6

10        石岡市             -34.0

11        鉾田市             -32.5

12        取手市             -32.1

13        筑西市             -31.8

14        坂東市             -31.7

15        笠間市             -30.9

16        下妻市             -29.8

17        龍ケ崎市          -29.0

18        かすみがうら市  -29.0

19        小美玉市          -28.0

20        常総市             -26.8

21        結城市             -25.8

22        土浦市             -22.8

23        古河市             -22.2

24      ひたちなか市   -20.1

25        神栖市             -17.9

26        那珂市             -17.1

27        水戸市             -11.7

28        鹿嶋市             -9.0

29        牛久市             -4.1

30        守谷市             -0.1

31        つくば市           7.0

32        つくばみらい市  7.6