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今あらためて気候変動問題を考える

 地球温暖化とか気候変動という言葉は、良くも悪くも耳慣れてしまい、陳腐な印象さえ与えるかもしれませんが、最近、脱炭素、グリーン化、再生可能エネルギー(再エネ)、電気自動車(EV)、化石燃料削減などの環境に関連する新たな話題がメディアを賑わせるようになってきました。こうしたホットなテーマについて私たち一市民がどう対処したらよいか、あらためて考えてみたいというのが本ブログの狙いです。最初に少し堅苦しい話になりますが、この分野の最新事情について概観したのち、より住みよいまちづくりを目指すために取るべき姿勢について記していこうと思います。

 

気候変動問題に関する最新事情

 

イギリスのグラスゴーで開催されていた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が11月13日、合意文書を採択して閉幕しました。産業革命以来、人類の活動に依って地球の温暖化が進み、地球の平均気温はすでに1.2度上昇していること、その原因は人間活動に依る(石炭、石油、天然ガス[LNG]などの)化石燃料の燃焼で発生する二酸化炭素などの温室効果ガスの蓄積によること、その上昇を(概ね10年以内に)1.5度以内に抑えなければ、地球環境の危機的状況が不可避となること、などが再確認されました。

 

途上国、中国、インドが、化石燃料の削減に反発し、表現を石炭火力の「段階的廃止」から、「段階的削減」に向けた努力の加速を各国に要請する、と後ろ向きに修正されたことが注目されました。何故かと言えば、二酸化炭素を大量に排出して先に経済成長した先進国に対して、これからの経済成長を抑制されることにもつながる途上国としては不公平感、不満が根底にあるからだと考えられます。さらには、排出量トップの中国*1)と第3位のインドが、カーボンニュートラル*2)の達成目標をそれぞれ2060年、2070年とし、2050年という合意目標に遠いことが大きな理由です。2つの経済大国と他の途上国の事情や要求を無視することはできず、今後のCOPの運営の難しさを再認識せざるをえません。

 

12018年の世界の二酸化炭素排出量335億トンのうちのトップ5は、中国28.4%、[アメリカ14.7]インド6.9%、[ロシア4.7%、日本3.2]

2)カーボンニュートラル:温室化ガスの排出そのものを削減するとともに、すでに排出した分を森林などに吸収させたり除去したりすることによって、実質的な排出量をゼロにすること。

 

ここで日本(排出量世界第5位、3%)はどうかというと、エネルギーを火力発電に大きく依存している(国内全排出量の約75%)ため、首相自らの現地プレゼンにも関わらず温暖化抑制策の政府方針が認められず、「化石賞」を受けるという不名誉な事態も特筆すべきことでした。一時先頭を走っていた日本は今、脱炭素後進国になり下がったといっても過言ではありません。ただし、日本にはエネルギー政策を単純に決められない特殊事情があり、今後どのような手法で目標に至ることができるか、難しい重荷を背負っていると言わざるを得ません。以下、日本のエネルギー事情について記しましょう。

 

日本のエネルギーの現状と今後

 

10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画によれば、2030年の電源構成として、再エネの割合を3638%と19年実績(18%)から約2倍に、原子力の2022%は同6%から3倍以上に、一方で、LNG火力は同37%から17%減の20%へ、石炭火力は同32%から13%の減の19%へと大幅な縮小を見込んでいます。しかし、その実現には多くの識者から疑問符が投げかけられているように、30年目標(2013年比46%減)、50年のカーボンニュートラル目標達成は極めて困難とみられています。政府は現状、コロナ禍対応の緊急経済対策に注力せざるを得ませんが、気候変動対策のかなめであるエネルギー対策、すなわち化石燃料依存からの脱却、再エネへの急速なシフトなどへ大きく舵を切ることが喫緊の重大課題であることは間違いありません。

 

 気候変動対策のためのエネルギー政策が困難である理由について簡単に触れます。まず二酸化炭素排出ゼロの原子力発電ですが、これは10年前の福島事故に起因して国民に根深い拒否感があり、新規建設はもとより再稼働も難しい事情があります。他のエネルギー源に比べて安定稼働できる特徴があるため、ベースロードとして電源構成の約20%を目標としています。安全性確保への官民一体の真剣な取り組みが求められます。

 

 再エネとは再生可能エネルギー(Renewable Energy)のことですが、具体的には、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(動植物に由来する有機物)などがそれに属します。その特徴は、「枯渇しない」「どこにでも存在する」「二酸化炭素を排出しない(増加させない)」ということです。脱炭素化の切り札とも考えられていますが、それぞれ課題も抱えています。太陽光と風力に大きな期待がかかっていますが、どちらも(日照や風況といった)気候条件に依存するため、発電量が変動する問題があります。また国内には、太陽光パネルの設置可能面積が不足していること、風力発電も陸上部分の設置場所が確保できず、洋上では建設の難しい浮体式にならざるを得ないなどの問題があります。発電量の変動を補うには、安定電源あるいは蓄電池が不可欠で、既存電源系統への安定接続を含め課題は山積しており、電源構成比2倍化目標の実現は容易ではありません。また、小型水力や新規地熱発電への期待もありますが、電源構成への寄与は限定的です。バイオマス発電は、廃棄物を利用した循環型社会構築に寄与できるため有望な技術なのですが、原料調達にコストがかかる(国内での調達困難で現状約7割を輸入、他の廃棄物も収集・運搬・管理などにコスト負担大)こと、大規模化が困難なことなど課題が多く、電源構成の主役にはなりにくいと言われています。

 

 一方、最も炭素排出量の多い石炭火力は、水素をアンモニアとして原料に添加することにより排出量を低減する方法、あるいは輩出した二酸化炭素を分離・回収・利用・貯蔵(CCSまたはCCUSと呼ばれる)という技術が検討されています。本来なら火力は早期に廃止すべきですが、国全体のエネルギー構成の主役であり、(大規模停電などの)電力供給リスクを考慮すると不安定な再エネに頼りきれず一定期間使用を継続せざるを得ないというのが実情と思われます。そういう意味では、再エネの安定供給技術、(アンモニアの調達やCCUS技術を含む)火力発電の排出量低減技術、などの開発の進捗に合わせてバランスに配慮しつつ柔軟にエネルギー構成を調整していくという難しいかじ取りが求められそうです。

 

世界的に共有されてきた気候変動問題の深刻さ

 

 こうした脱炭素化を目指した動きが活発化してきたのは、前述したように(人間活動に依って排出される二酸化炭素などが温室効果を引き起こしているという)気候変動の実態と原因が科学的に正しいと認められるようになったこと、そして世界各地で熱波、暴風雨、海面上昇などの異常気象が身近で頻発するようになったことがあります。

 

スウェーデンの女子学生グレタ・トゥーンベリさんは、2018年、15歳のときスウェーデン議会の外で、「大人が私の未来を台無しにしようとしている」というメッセージを掲げ一人でストライキを始めました。その後、各地で

スピーチをしたり、飛行機を使わずヨットでニューヨークへ渡ったり、気候変動対策の遅れに抗議活動を続けています。「地球温暖化による危機は非常に深刻で、人類は生存の危機に直面している」、「私たちの文明を終わらせる可能性が高い」などと厳しい言葉を投げかけます。これは、気候変動問題が、彼女のような若者に与える影響を強く懸念しているからであり、世界中で何百万人もの若者の講義デモにつながっています。彼女の持つ圧倒的なエネルギーに驚かされますが、その活動の意味、価値を皆が肝に銘じるべきと考えます。新時代を担う若者、それに続く世代のために、私たちはこの問題に真剣に向き合う時期にあることを再認識しなければなりません。

 

ひたちなか市では、本年3月に「ゼロカーボンシティ宣言」を発表しました。第3次環境基本計画に基づいて、地球温暖化対策を緊急に推進することが求められています。今後示される様々な具体策に期待したいと思いますが、市民一人一人が、二酸化炭素排出を抑えて温暖化抑制にはどんな行動をとるべきかという意識を高め、例えば、廃棄物を削減または分類して廃棄、暮らしの中でなるべく省エネ化を図る、自動車排ガス低減のため不要なクルマ利用は避ける、など普段からの地道な実践が必要です。住みよいまちづくりを進めていく際のすべての対応策に、忘れてはならない視点であると言えるでしょう。次のブログでは、気候変動問題に市民が貢献するための一つの提案について取り上げる予定です。

以上