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毎日の食事が気候変動に影響を与えているって本当?

 

 前ブログで、気候変動、すなわち地球温暖化を防止することの重大さを伝え、市民皆が具体的行動に本気で取り組まないと、地球の危機的状況に陥ることを指摘しました。本ブログでは、暮らしの大切な要素「食」が気候変動対策に極めて大きな意味を持っていることを再確認し、普段の生活の中で私たちが取るべき具体的対処法について述べたいと思います。

 

気候変動に及ぼす食品ロスの影響とは?

 

 これまで薄々は感じていたのですが、やはりそうだったんだと再認識したのが「食品ロス」でした。詳しくは【参考記事①】を参照いただきたいのですが、要点を以下にまとめます。

 

地球温暖化防止対策としてまず思い浮かぶのは、化石燃料を燃焼させたときに排出される二酸化炭素であり、火力発電や自動車からの排ガスを削減する必要性は広く認識されています。しかしIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル、Intergovernmental Panel on Climate Change)の略)の報告書によれば、1016年に排出された温室効果ガスのうち、810%は食品ロスから出たものと推定されており、自動車から排出される量(10.0%)とほぼ同じなのです。さらに、食品の生産・加工・包装・流通・保管・調理・消費・廃棄など、食に関わるすべての活動を指す「食料システム」にまで話を広げると、世界で排出される温室効果ガスのうち、2137%は「食料システム」から排出されたものだとIPCCは推定しています。

 

「食品ロス」がなぜ地球温暖化につながるかと言えば、食品ロスは生ごみとして焼却処分される場合がほとんどで、焼却すれば、当然、二酸化炭素が発生するというわけです。生ごみを埋め立てる国もありますが、そうすると二酸化炭素の25倍以上の温室効果があるメタンガスが発生してしまいます。

 

しかし、地球温暖化が危機的状況にあると広く認識されながら、食品ロスのこうした事実を知る市民は(国際的にも)少ないのが現状です。結局、食品ロスはあまりに身近すぎるため、かえって目に入りにくいのかもしれません。食品ロスは気候変動に大きな影響を及ぼすことを再認識すべきなのです。

 

専門家による、地球温暖化を「逆転」させる100通りの解決策が提示されていますが、その中で食品ロス削減は第3位と効果が極めて大きいとされています。食品ロス問題は、食べられる食品が無駄に廃棄される問題としてのみ捉えられてきましたが、気候変動対策として認識しなおす必要があるのです。

 

以上述べてきたように、食品ロスについては、気候変動という差し迫る人類への脅威に対して、市民一人一人が着実に貢献できる身近な課題と言えるでしょう。国内では年間612万トンもの食品が廃棄されています(2017年度推計値、農水省)。これは国民一人当たり一年におよそ48kgもの食料を無駄に捨てていることに相当します*1)。食糧危機に瀕している人々に対して「もったいない」ことは勿論ですが、食品ロスを減らすことは地球温暖化抑止というさらに大きな課題を解決することに必須な取り組みであることを日々確認する必要があります。

 

1)日本での食品ロスは、事業系食品ロス(328万トン)と家庭系食品ロス(284万トン)の2つに分けられます。前者は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなど小売店での売れ残りや返品、飲食店での食べ残し、売り物にならない規格外品など。後者は、家での料理の作り過ぎによる食べ残しや、買ったのに使わずに捨ててしまうこと、料理を作る時の皮のむき過ぎなどです。

 

【参考記事①】

食品ロスは温暖化の主犯格? 知られざる気候変動との関係 2021.09.21

https://www.asahi.com/sdgs/article/14444362

 

食肉も気候変動に悪影響を与えている?

 

 食べ残しや廃棄などの食品ロスについて述べましたが、次に日々口にすることの多い「食肉」が気候変動の大きな要因になっている事実に触れたいと思います。そのために、産業活動の一つとして「畜産業」に着目します。

 

 国連食糧農業機関(Food and Agriculture OrganizationFAO)は、人為的に排出されている温室効果ガスの14.5%が畜産業に由来していると発表しました(2013.9)。この数値には、動物の餌や家畜の飼料(生産・加工など)、糞尿処理(亜酸化窒素放出)、動物(とくに牛)の口から放出される腸内ガス(ゲップ=メタンガス)、食肉加工などを含みますが、排気ガス主体の「運輸業「と同等の多さです。具体的には、牛肉1キロ当たりの排出量は二酸化炭素換算で23.1キロ(うち、ゲップなどで出るメタンが半分余り)、豚肉では同7.8キロと言われています。こうした問題を解決するために、飼料を育てるのに使用する肥料を減らす、飼料・食肉のサプライチェーンを見直す、腸内発酵を減らすための飼料添加物を開発する、などの対応策が必要です。しかし、世界の主要な食料品企業や小売業者は、気候変動問題に対するこうした取り組みに消極的な現状のようです。

 

畜産業からの炭素排出が大きな問題であるのに、日本国内ではあまり注目されていません。その理由の一つは、牛肉などの食肉の大部分を輸入に依存している、すなわち自給率*2)が低いからだと考えられます。実際、日本における(畜産業を含む)農林水産分野の二酸化炭素排出量は全体の約3.9%(農水省、2019年度)となっており、気候変動への寄与が低いと認識されているとみられます。産業振興への障害と捉えられている可能性もあります。しかしこの問題は、責任を生産国だけに押し付けるのではなく、地球的な視座で取り組むべきテーマです。食料消費量の大きい日本は積極的な貢献が求められるはずです。

 

2)牛肉の自給率(カロリーベース)は36%ですから64%が外国産です。しかも、国産牛肉用の飼料は大半が輸入で、輸入飼料で育ったものを除外すると、牛肉の自給率は10%、つまり9割が輸入となります。豚肉は49%、鶏肉は64%となっていますが、同様に、外国産飼料で育てられたものを省くとそれぞれ6%(輸入94%)、8%(同92%)と著しく低くなります。

 

【参考記事】

 

地球温暖化ガスの14.5%、家畜に由来 FAO報告書 2013101

https://www.afpbb.com/articles/-/3000579

 

バカにできない?肉の生産で出る温室効果ガス 20207281830

https://www.tokyo-np.co.jp/article/45380

 

日本の「食料自給率」はなぜ低いのか? 食料自給率の問題点と真実 2019.3.12

https://smartagri-jp.com/agriculture/129

 

食肉を削減する秘策は? 「代替肉」の出番?

 

 とはいえ、私たちの食生活は欧米化したこと、重要なたんぱく源であることから、「食肉」を削減することは中々難しいことも否めません。そこで、その解決策として脚光を浴びているのが「代替肉」です。

 

 「代替肉」とは、大豆やエンドウ豆などから作られた食品で、本物の肉のような食感や味わいを再現したものです。「大豆ミート」や「フェイクミート」とも呼ばれ、身近では、大豆ミートのパスタソースやハンバーグ、あるいはハンバーガーが販売されており、本物と区別がつきにくいレベルと好評のようです。牛や豚などの動物の細胞を、体外で培養させて作った培養肉も代替肉に含まれます。ベジタリアンやビーガン向けだけでなく、欧米ではこうした代替肉の需要が高まっているとの報告があります。日本は後追い状態ですが、最近、フードテックとして商品開発が進展してきました。

 

 畜産業に依存しない代替肉が普及すれば、排出される温室効果ガスを削減できる効果が大きいことは容易に理解できるでしょう。代替肉はまた、脂質が少ない、すなわち低カロリーであることから、同じたんぱく源でも健康的に有利(ヘルシー)というメリットもあります。大豆などを家畜の飼料(穀物の9割が家畜用)としてでなく食料にすれば、世界の食糧危機を緩和する効果もあります。加えて、動物愛護の視点からも好まれているようです。ただ、現状では代替肉は高価格という課題があるため、生産量拡大とともに生産方法の革新が望まれるところです。

 

まとめ

 

 以上、「食」と気候変動との関係について取り上げ、意外と知られていない事実、すなわち食品を廃棄すること(食品ロス)や食肉を摂ることが温室効果ガス増加を起こす大きな要因になっていることを紹介しました。普段の生活の中で気候変動問題解決に貢献するための、小さいけれども着実な一歩とできることを再確認すべきでしょう。また食肉を削減するために、たんぱく源を代替肉に変更するといった食生活が気候変動抑制に有効であることも再認識すべきと思います。さらに、にぎわいと元気溢れるまちづくりという視点で捉えれば、飲食店や小売店などでの食品ロス削減、代替肉の普及促進などを核とした取り組みは、独自性と差別化を伴ったポジティブな効果につながると期待されるでしょう。

 

【参考記事】

 

「代替肉」とは何? 環境への影響や気になる素材について学ぼう 2021.9.7

https://hugkum.sho.jp/270809

 

日本が代替肉推奨へ! 国内の代替肉・培養肉の状況 2021/06/17

https://www.hopeforanimals.org/meat-free-monday/japan-meatalternative/

以上