◇コロナ禍がようやく沈静化しつつありますが、国内には人口現象、少子高齢化、経済停滞、などの社会課題が山積、グローバルにも気候変動、安全保障、金融問題などによる、不透明で不安定な状況が続いています。そうした先が見通しにくい現在、国においても、地方においても、目標を幸福な暮らしに置き、デジタル技術を駆使して課題を解決しようとする動きが目につくようになっています。幸せな暮らし、幸福な社会、はまた「ウェル・ビーイング」という言葉で表現されます。私たちも、より住みよく幸せな地方都市、ウェルビーイングを感じられるまちづくりを目指しています。ところが、幸せ、幸福、ウェルビーイング、といった抽象的な概念は必ずしも明確ではなく[1]、人によってとらえ方が異なります。
◇そこで本ブログでは、今注目を集めている対話型AIのChat GPTを用いて、「幸福」に関わる言葉やその捉え方について整理し、協働して未来創造しようとする私たち皆で、その結果を共有したいと思います。日本人に特有の幸福感についても触れます。
◇ご承知のように、Chat GPT(今回はversion3.5使用)では、ウェブにある情報・データを集積し、最もありえる回答を生成するものです。従って、独創的な、あるいは個性的な結果は期待できない代わりに、比較的一般的で最大公約数的な回答が得られるはずです。将来ビジョンや目指す方向を検討するうえで、有効な指針になると考えます。なお、Chat GPTの回答と筆者の意見を区別するため、後者の文頭に◇を付します。(この色) また、Q1~5は筆者の質問、A1~5はChat GPTの回答です。
◇まず基本的なところから、「ハピネス(幸福)」と「ウェル・ビーイング」という二つの意味を明確にしておきましょう。
ウェルビーイングとは何か?
Q1:ハピネスとウェルビーイングとの違いを教えてください
A1ハピネスとウェルビーイングは、関連する概念ですが、異なる意味を持ちます。
ハピネス(幸福)は、一時的な感情的状態であり、喜び、楽しさ、満足感など、良い感情を経験することを指します。幸福感は、短期的に得られるものであり、外部の要因によって左右されることがあります。例えば、友人や家族との交流、好きなことをする時間、贈り物をもらうなど、幸福感を得る要因は多岐にわたります。
一方、ウェルビーイング(福祉)は、人間の生活全般の状態を指し、身体的、精神的、社会的に健康であることを意味します。ウェルビーイングは、長期的な状態であり、幸福感よりも深い意味を持っています。身体的に健康であること、心身ともにリラックスしていること、自己実現や目標達成などの精神的な側面、そして、社会的な関係性やコミュニケーションなどの社会的な側面も含まれます。
つまり、ハピネスは短期的な感情的状態であり、幸福感をもたらしますが、ウェルビーイングは長期的な状態であり、身体的、精神的、社会的な面で健康であることを指します。
◇以上のことから、地方行政やまちづくりで目指す「幸福」はどちらかと言えば「ウェル・ビーイング」と考えられます。では、ウェル・ビーイングとはどのような状態なのか少し突っ込んでみます。
Q2:人間がウェルビーイングであると感じるのはどういうときですか?
A2:人間がウェルビーイングであると感じるのは、個人差がありますが、一般的には以下のような状況で感じることが多いです。
1. 身体的な健康: 健康的な食事や運動、十分な睡眠、身体の不快感のない状態など、身体的な健康があると感じるとウェルビーイングを感じることができます。
2. 意味ある人間関係: 家族や友人、恋人、同僚などとの良好な人間関係を築くことで、社会的に繋がりを感じることができ、幸福感を得ることができます。
3. 自己実現: 自分自身が成長し、自分自身の能力を発揮できる環境に身を置くことで、達成感を感じ、ウェルビーイングを感じることができます。
4. 精神的な健康: ストレスを管理し、内面的な平和を感じることで、精神的な健康が保たれ、ウェルビーイングを感じることができます。
5. 経済的な安定: 財政的な安定があると、将来にわたって自分自身や家族を支えることができ、安心感を得ることができます。
これらの状況に当てはまる場合、人間は自分自身のウェルビーイングを高めることができます。ただし、人間のウェルビーイングには個人差があるため、上記のような状況がすべて当てはまらなくても、自分自身が幸せと感じる状況を見つけることが大切です。
◇よく言われていることの集約ですが、上手にまとめてくれています。ただ、「人それぞれ」ということもきちんと指摘しています。なお以下では、とくにウェルビーイングという言葉にこだわらず、「幸せ」「幸福感」といった表記で議論します。
日本人のウェルビーイング感は低い?
◇日本人の幸福感は世界ランキングで低位にあることがよく指摘されます[2]。最近、コロナ禍の影響で、幸福度が低下した国が増えたためと見られ、日本のランクが上昇したとの報告[3]がありますが、47位ですので低位にあることは変わりません。
Q3:日本人の幸福度は世界で約50位と低く、GDPの大きさに比べて異常に低いという特徴があります。日本人が幸福感を感じにくい理由は何でしょうか?
A3:日本人が幸福感を感じにくい理由は、複数存在します。
1. 過剰な労働時間やストレス
日本の労働環境は過剰な労働時間が問題とされ、多くの人が長時間労働を強いられています。また、ストレスも社会問題となっており、うつ病や過労死などの問題も深刻です。これらの問題が日常生活に大きなストレスを与え、幸福感を低下させる要因となっています。
2. 社会的孤立や人間関係の希薄さ
日本の社会は、個人主義的な西洋文化と集団主義的なアジア文化が複合しています。そのため、個人の自己実現や自己表現が制限される一方で、社会的なつながりや人間関係が強調されます。しかし、現代社会においては、個人の孤立や人間関係の希薄さが深刻な問題となっており、幸福感を低下させる要因となっています。
3. 経済的格差や社会的不平等
日本の経済的格差は、国際的に比較しても大きく、貧困層の存在が問題とされています。また、就職や出世などの社会的地位が、人々の幸福感に大きな影響を与えるとされています。そのため、社会的不平等や格差が幸福感を低下させる要因となっています。
4. 学歴社会の圧力
日本の社会は、学歴社会と呼ばれるほど、学歴が重視されます。そのため、教育機会や学力に偏りが生じ、就職や社会的地位に大きな影響を与えます。また、学校教育においては、詰め込み教育が問題視されており、学生たちにとって、学びの喜びや創造性を奪う原因となっています。
以上のような要因が、日本人の幸福感を低下させている可能性があります。
◇国際比較の具体的データは示されていませんが、腑に落ちる点が多く、かなり的確な回答と言えるでしょう。とくに2.に示される「人間関係の希薄さ」には注目すべきでしょう。まちづくりにおいて、とくに留意しておくべき事項と考えます。またその部分に指摘されているように、「集団主義的なアジア文化のため、個人の自己実現や自己表現が制限される」とする、日本人に固有の精神性に着目し、以下のような質問もしてみました。
日本人の幸福感を決める要因とは?
Q4: 日本人は、集団の調和を重視するため、個人的な幸せを強く求めない傾向がありますが、その根本となる思想は何ですか?
A4:日本人が集団の調和を重視するために個人的な幸せを犠牲にすることがあるのは、主に「和」や「共同体主義」などの思想に起因しています。
「和」は、日本文化において非常に重要な概念であり、相互に調和を図ることが重要だとされています。日本人は、自己中心的でなく、集団のために尽くすことが美徳とされているため、個人的な幸せを求めることよりも、周りの人々や社会全体の幸せや調和を重視する傾向があります。
また、日本には「共同体主義」という考え方もあります。共同体主義とは、個人の自己実現よりも、共同体全体の利益を重視する考え方であり、日本の伝統的な家族や地域社会などで見られます。この思想が、日本人の集団的思考や行動に影響を与えているとされています。
これらの思想に基づいて、日本人は、個人的な幸せよりも、社会全体や周りの人々との調和を重視する傾向があるとされています。
◇やや旧来型の捉え方に偏っている感じはありますが、日本人の行動特性を上手く説明していると考えられます。もう少しほりさげてみましょう。
Q5: 日本人が、個人的な幸せよりも、社会全体や周りの人々との調和を重視する傾向がある理由に東洋的思想は関係ありますか
A5: はい、日本人が個人的な幸せよりも、社会全体や周りの人々との調和を重視する傾向があるのは、東洋的思想に関係があります。
東洋的思想には、個人よりも全体、部分よりも全体、短期的な視点よりも長期的な視点を重視する傾向があります。また、東洋的思想では、自己中心的な考え方や競争的な価値観は否定され、相手を思いやる思想や調和を重視する思想が重要視されます。
このような東洋的思想が、日本人の集団的思考や行動に影響を与え、個人的な幸せよりも社会全体や周りの人々との調和を重視する傾向があるとされています。また、東洋的思想は、日本の伝統的な価値観や文化、社会制度などにも反映されていると言われています。
◇このような日本人固有の思考・行動様式が、政治、経済、経営などの様々な場面に現れていることが納得できます。日本は、高品質な商品、丁寧なサービス、正確な時間管理、など世界に誇れる国柄を築きました。また、安全で秩序のある清潔な社会も世界随一です。ただ、それらの背後には、「個人的な幸せよりも社会全体や周りの人々との調和を重視する」特長に依ることを再認識します。「個人的な幸せ」が犠牲になった結果であると言えるでしょう。翻って、こうした日本人の特性が、独創性、すなわちイノベーションやスタートアップなどが生まれにくいことの原因になっているともいえるのではないでしょうか。行政や経営において、未来の明るいビジョンを描きにくい要因かもしれません。
まとめ
◇「幸福」は、人間にとって普遍的な問題であり、思索、哲学の範疇でもあります。幸福論は、古代ギリシャの時代から、人生の意義や目的、人間の幸福の実現方法などについて考察が続けられてきました。一方、幸福を追求するための科学的・実践的なアプローチとして、ポジティブ心理学[4]が盛んになっています。どちらも人間の幸福に対する欲求を満たすことを目的としていますが、ここではこれ以上の深入りはしないこととします。
◇本ブログでは、対話型AIのChat GPTによって、ウェルビーイングとは何か、から日本人が幸せを感じにくい理由まで、世の中に集積されている事実を抽出し整理しました。参考になる様々なアイデアに触れることができ、あらためてこのツールのすごさに感動します。本を読み、文献を調査すれば得られる結果ではありますが、問いに対して30秒以内の短時間に整理された判りやすい文章を手にすることができ、考察を前進させられることの価値は甚大です。
◇ここで得られた結果に引き続き、次のブログでは、幸せなまちづくりのための市民の取り組み方、そしてモチベーションの高め方について議論を進めたいと思います。
【参考資料】
[1]「幸福=ハピネス」ではない。なぜ世界がウェルビーイングに注目しているのか。
「正直ピンと来ない」という人や「今更聞けない...」という人も少なくないウェルビーイング。その根本的な価値観や社会的意義を聞いた。
林慶
2023年03月07日 18時0分 JST
https://www.huffingtonpost.jp/entry/wellbeing-sb2023_jp_63ff6d5de4b0c253d3486f80
[2] 日本の幸福度、過去最低の58位 「寛容さ」足引っ張る
藤原学思2019年3月20日 17時38分
https://www.asahi.com/articles/ASM3N5HPDM3NUHBI01Q.html
[3] コロナ禍の3年で日本人は幸福になった納得理由
幸福度ランキングはコロナを機に反転上昇へ
日沖 健 : 経営コンサルタント
[4] 幸せを科学する!「ポジティブ心理学」で組織に意識改革を起こす方法
https://research.lightworks.co.jp/positivepsychology
以上
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