幸せになりたいと思うのは、誰もが共通の願いです。でも、幸せとは何でしょうか? 自分の幸せはどうやって測るのでしょうか? 実は、国や地方自治体では、幸福度を測る指標を作っています。これらの指標は、暮らしのさまざまな分野における客観的なデータや主観的な感情をもとに、社会の進歩や人々のウェルビーイングを評価するものです。このブログでは、幸福度指標の種類や意味、茨城県の取り組みや世界の動向について紹介します。幸福度指標を知ることで、自分の幸せを見つけるヒントが得られるかもしれません。
ウェルビーイングとか幸福とかこだわっているけど、何のためなの? 意味あるの? まちづくりと関係あるの?という疑問を持たれる方は多いかもしれません。そんなこと考えているヒマなんか無いよ、日々の暮らしで精いっぱい、今の生活が続けば充分、というのが実態でしょうか。確かに、コンビニやファミレスに行けば美味しいものは何でも食べられるし、スマホさえあればいつでも気分転換できるから不満はとくに感じないかもしれません。でもそれは、一時的な感情、刹那的な快楽であって持続的な幸福感、つまりウェルビーイングな状態ではないのです。将来も今得ている充足した感情が続くのか不安を覚えることはありませんか?
日々仕事に追われている人も多いでしょう。でも、ワーク・ライフ・バランスと言って、働きすぎを見直して、もっと自分の生き方、自由な時間を大切にしましょう、という社会的なコンセンサスがありますよね。人生は仕事だけじゃない、もっと他に多様な生き方があるはず。ワークとライフのバランスを見直して、つまりワーク以外の時間を増やして、ウェルビーイング、幸せを感じる暮らしへ変えていこうとする流れです。もちろん、幸福感は人それぞれ異なるものですし、ウェルビーイングを獲得することは容易ではありません。幸福を得る方法を個別に教えてくれるなどというマニュアルがあるわけでもありません。ただ、ゴールは見えなくても、生きがいを含めた人生の幸せやウェルビーイングというものは、いつの時代でも、人間が普遍的に追い求め続けるもの、ということは否定できないと思います。
ということで、もう少しお付き合いください。ここではまず、よくランキング形式で語られる「幸福度」について議論してみます。
幸福度指標とは何か
国が発展し、経済が成長することを示す尺度として、GDP(国内総生産:Gross Domestic Product)が一般に用いられます。このGDPが社会の進歩を表す指標として適切なのかと疑念をもったフランスのサルコジ大統領は、2008年、経済と社会進歩との関係について調査を開始し、経済的な生産の測定にウェルビーイングの測定を加えることの必要性を指摘しました。それが契機となり、人々の暮らしを比較できる「BLI(より良い暮らし指標Better Life Index)」が生まれました[1][2][3]。
BLIは、暮らしの11の分野(住宅、所得、雇用、社会的つながり、教育、環境、市民参画、健康、主観的幸福、安全、ワークライフバランス)について、OECD(経済協力開発機構)加盟37カ国とブラジル、ロシア、南アフリカを加え、あわせて40カ国の指標を比較できるというものです。ただし、それらの尺度は幸福度を表現するのに欠かせないものですが、正確な測定は簡単ではなく、考察、再測定、改善などを常時伴う開発途上の指標とのことです[1][2]。
日本の特徴はどうかと言えば,例えば「仕事と報酬」において、就業率や雇用の安定性は他の国々と比べると良好だが,仕事のストレスや報酬が低い、平均寿命はOECD加盟国中最高だが,自覚的健康状態は他国よりかなり低い、などが報告されています[1]。その結果として、前ブログ(■ウェルビーイングって何だ?、■幸せな社会を目指して)でも示したように様々な調査において、日本の幸福度が世界の中で低位にあることになるのです。幸福度がいつでも高いのは、フィンランド、デンマーク、スウェーデンといった北欧諸国です。コスタリカ、メキシコ、パナマなど経済医的発展が途上にある中米諸国の幸福度も日本より高いことは注目されます[4][5][6]。
幸福な社会を目指すためには、測定する尺度の定義を明確にする必要はありますが、国ごとに比較するような場合は、その中身を理解する必要があると言えるでしょう。なお、国ごとの幸福度の違いについては、別なところで議論したいと思います。
幸福度指標に関する茨城県の取り組み
国や地方自治体の政策を立案するに当たって、ウェルビーイング、幸福感を尺度として目標設定しようとする動きが目立ってきています[7]。茨城県も例外ではなく、「いばらき幸福度指標」が設けられました[8][9]。県が考える「幸福」の定義、幸福度指標導入の目的などについて以下のように記載されています。
「県では、『県民一人ひとりが未来に希望を持つことができ、自身のなりたい自分像に向かって一歩でも二歩でも近づいていけるよう、挑戦を続けられる」ことが幸せな状態と考えています。今回、そのような環境の整備・充実状況について定量的に把握することとしました。」
いばらき幸福度指標を決める具体的な測定パラメーターについては、本ブログの末尾に掲載してあります。どのような測定値に基づくのか概観いただきたいのですが、雇用状況、産業規模、教育環境、働き方、多様性・女性活躍・人権、文化・スポーツ、地域医療・介護・保健、健康長寿、障害者自立支援、など非常に幅広い指標が網羅されていることがわかります。
こうした客観的指標を定期的に測定することは、より幸福度の高い県政の指針策定に有効であると考えられます。経済的に豊かな生活、働きやすく安心安全な社会をもたらすために欠かせない基本的な活動です。ちなみに、この方法では、「2022年度の本県の総合順位は全国第10位」となっています[9]、しかし、ここで得られる指標が、県民の幸福感、ウェルビーイングを率直にかつ的確に表現できているかについては疑問の余地があります。OECDのBLIのところで述べたように、真の幸福感は主観的な部分の寄与が大きく、客観的指標だけで県民の幸福度は表現しきれないというのが理由です。ましてや他の県と比較する際には留意が必要です。
幸福度指標には、人間の感情の部分、すなわち主観的幸福感についての評価、分析を追加してほしいと希望します。心の満足を考慮しなければ、ウェルビーイング、幸せの追求は形骸化すると言っても過言ではないと思います。
いばらき幸福度指標は開始されて間もなく、今後も見直しが継続されるとのことです。こうしたウェルビーイングを様々な角度から測定し、政策に活かしていく動きは、今後ますます盛んになっていくものと予想されます。全国で北関東の幸福度は最低レベルとの調査もあります[11]。随時そうした動向を監視していきたいと思います。なお、先進的な取り組みで知られる富山県の事例を参考資料に示します[10]。押しつけがましくなく、県民にまず考えてもらうという姿勢に共感できます。
まとめと市民の皆さんへ望むこと
ウェルビーイングとは何か、日本人の幸福感、ウェルビーイングが感じられる地方都市のあり方、そのためのぎょうせいや市民の取り組み方、などについて、Chat GPTも活用しながら前2つのブログ(■ウェルビーイングって何だ?、■幸せな社会を目指して)で述べたのち、「幸福度指標」を本ブログで取り上げました。ウェルビーイングも幸福も一朝一夕で語れるものではなく、その方法論にしても多種多様であり、単純化や一般化は困難です。ここで読者の方々へ、このテーマをもっと深く追及すべきなどとあえて押し付けるつもりもありません。
ウェルビーイングや幸福を目指そうとする意識が、日本人には低いことは幾度も述べました。歴史的、文化的、宗教的、遺伝学的な日本人に特有の性質が背景にあり、生き方を容易に変えることは難しいのかもしれません[12][13]。
しかしながら、より住みよいまちづくりのためには、市民一人一人の「よりよくありたい」「ウェルビーイングをより感じられるまちにしたい」という意欲、気概が盛り上がってこなければ、実現に向けた歩みを進めることはできないと考えています。そうした内的衝動、あるいは自発的動機付けともいえる心の中の前向きな気持ちを、市民皆が養い育ててほしい、という強い思いがあります。
悲しみは突然予告なしにやってくるけれど、幸福は取りに行かなければ得られるものではない、とよく言われます。一時的な幸せや快楽も同じで、棚から牡丹餅的な幸運は長続きしません。有名な哲学者も言っています[14]。「幸福は他人からもらったり、偶然に与えられたり、あるいは神から授けられたりしたものではない」、「自分の『力を発揮する』ことによって、自ら獲得するものだ」、「与えられた幸福などというものは存在しない。しかし、自分でつくる幸福は、決して裏切らない。」
まちづくりも同じことだと思います。待っているだけでは、住みよさ、暮らしやすさ、など実現は到底期待できないと考えるべきです。市民一人一人が、よりよくありたい、もっと住みよい社会にしたい、といったウェルビーイングを実現しようとの意欲を高めていくことが求められています。明日は今日より少しでもよくありたい、という小さな希望で良いのです。何もやらないことのリスクは、何かをやることのリスクより大きいとも言えるでしょう。
とはいえ、一人でできることは限られています。私たちもそのことは十分に理解しています。でも、小さな一歩でも皆で同じ方向へ歩む意志を共有すること、小さくても協働して創り上げる志を共有すること、によってまちづくりは前進できると考えます。「協創」のスピリットでありパワーです。
まず市民の声を行政に届けることから始めましょう。市ホームページには、市への要望・提言を受けるしくみがあります。また最近、市のLINEに「市民レポート」が設けられました。この市民レポートは、道路や公園の損壊部分を行政へ知らせ、迅速な対応を促すことが可能ですが、それ以外の意見・要望を行政に届けることもできます。市民の意見表明は小さくとも民主主義の原点です。一人でも多くの市民の利用を期待します。
また、ここまで読んでこられた読者の方には、率直な感想・意見をぜひとも、以下のコメント欄に記し、送信していただきたいのです。お忙しい毎日かと思いますが、少しの間、立ち止まって今の生活を考えてみませんか?
【参考資料】
[1-1] GDP を超えて-幸福度を測る OECD の取り組み
Beyond GDP – Development of Measures for Understanding Well-Being
https://www.oecd.org/tokyo/publicationsdocuments/Beyond_GDP_Servicology2020.pdf
[1-2] GDPを超えて-幸福度を測るOECDの取り組み
村上 由美子, 高橋 しのぶ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/serviceology/6/4/6_8/_html/-char/ja
[2] より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)について
https://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm
[3] ハピネスの向こう側:ハピネス,ウェルビーイングとESG
加藤 兼司
日立製作所 グローバル渉外統括本部 産業政策本部
https://www.hitachihyoron.com/jp/column/gf/vol12/index.html?WT.mc_id=ksearch
[4] 日本の幸福度、過去最低の58位 「寛容さ」足引っ張る
有料記事
藤原学思2019年3月20日 17時38分
https://www.asahi.com/articles/ASM3N5HPDM3NUHBI01Q.html
[5]世界の幸福度ランキング
https://www.reuters.com/graphics/LIFE-CAREER-LJA/0100B0CQ0S3/index.html
[6]世界幸福度ランキング】日本の幸福度、2023年は47位に上昇 トップは6年連続の…
https://www.asahi.com/sdgs/article/14866028
[7] 日本のウェルビーイングのとらえ方
2022年5月22日
https://jp.weforum.org/agenda/2022/05/jp-japan-well-being-davos22/
[8] 精神的豊かさを志向する時代へのシフト:茨城県
[9]「いばらき幸福度指標」の見直しと2022年度の全国順位について
知事:お願いします。
https://www.pref.ibaraki.jp/bugai/koho/hodo/press/19press/p221201.html##1
[10] 富山県:ウェルビーイングの推進
https://www.pref.toyama.jp/100224/wellbeing-toyama.html
[11] 未婚者と既婚者、幸福度が高いのはどっち?
掲載日
2023/04/30 08:00
[12]日本人の幸福度が低すぎるのは「遺伝子的な要因」にあった
スマホ脳の処方箋(2)
2022/11/26
https://zuuonline.com/archives/242244
[13] 日本人の不幸の原因は中国から伝わる
儒教・朱子学の思想にあった
満員電車やサービス残業に耐える日本の
社畜社会の原因はココにあった!!
https://english.cheerup.jp/article/5263?page=1
[14] 幸福を哲学で突き詰めた人にこそ見えている視点
偶然でなくどうつかみ取るか、それが問題だ2023/02/14 15:00
【参考データ】
※いばらき幸福度指標
◆ 新しい豊かさ
雇用
① 雇用者報酬(雇用者1人当たり)②正規雇用率
産業振興 ③県民所得(県民1人当たり) ④工場立地件数 ⑤労働生産性(1時間当たり)
農林水産業
⑥農林水産業の付加価値創出額(県民1人当たり)
観光振興
⑦外国人宿泊者数 ⑧国内旅行者数 ⑨CO2排出量(県民1人当たり)
環境保全 ⑩一般廃棄物リサイクル率
◆ 新しい人財育成
教育振興
① 子どものチャレンジ率 ②大学進学率 ③学力 ④教員のICT活用指導力
出産・育児 ⑤合計特殊出生率 ⑥待機児童率
学び・文化・スポーツ・遊び
⑦教養・娯楽(サービス)支出額 ⑧都道府県指定等文化財件数 ⑨子どもの運動能力
多様性・女性活躍・人権・
⑩パートナーシップ制度人口カバー率 ⑪女性の管理職登用率 ⑫人権侵犯事件件数(県民1万人当たり)
働き方
⑬実労働時間
◆ 新しい安心安全
地域医療・介護・保健
④ 医師数 ②看護職員数 ③介護職員数(いずれも県民10万人当たり)
④介護・看護を理由とした離職率 ⑤自殺者数(県民10万人当たり)
健康長寿
⑥健康寿命
障害者自立支援
⑦障害者雇用率
犯罪防止
⑧刑法犯認知件数(県民千人当たり)
防災対策
⑨自主防災組織カバー率 防災対策 ⑩自然災害死者・行方不明者
数
◆ 新しい夢・希望
国際交流
①留学生数(県民10万人当たり)
ベンチャー創出
②起業率
若者に魅力
② 本社機能流出・流入数 ④若者就職者増加率 DX推進 ⑤デジタルガバメント率(市町村)
以上
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