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■シビックプライド高揚の鍵は市民参加とデジタル化

 

 

初めに

 私たちが住むこのひたちなか市をもっと住みよくしたいと思いませんか? 市外に住む友人や知人に、是非訪れてほしいと心から誘いかけられるまちにしたいと思いませんか? このまちが好きで、しかも誇りに感じていますか?

 

 自分の住むまちを誇りに感じる気持ちをシビックプライドと言います[1]。本市の総合計画に掲げる目標の5番目に位置づけられている事項でもあり、それを盛り上げようとする施策がいくつも講じられています。昨年秋にも、シビックプライドフェスティバルが催されましたので、この動きを気に留めておられる市民の皆さんは多いかもしれません。より住みよいまちを実現するには、このシビックプライドを高めていくことが肝要という訳です。

 

 シビックプライドを高めていくには?

 

 先のシビックプライドフェスティバルには、市長はじめ芸能人(黒澤和子さん、雄ペンギン)、有識者(大杉先生、山崎先生)、市内で活躍する若手リーダーらとともに数十名の市民が参加し、集まって楽しむこと、人と人のつながりをつくること、の大切さを共有しました。シビックプライドを高めるためには、市民が互いに交流したいという気分を抱いて、様々な催しや会合などに参加することがまず必要ということです。

 

 集まって楽しむ試みとして市では、ファンベース、シンポジュウム、ワークショップなどのイベントを企画実行しています。げんきNETひたちなか[2]や各種サロン活動[3]なども市民参加型活動として有意義な機会と言えるでしょう。

 

集まって楽しむ活動だけに終わらせないこと

 

シビックプライドを高めていくために重要な視点を、先のフェスティバルで大杉先生と山崎先生が指摘されました。それは、ただ単に集まって楽しむだけにとどまらず、市民参加型活動をもっと前向きに、未来を見据えた持続的なものとしていく必要がある、ということです。より住みよいまちの将来ビジョンを描き、それへ向けて市が前進していくことに共感し、気運を高めていくことが不可欠なのだ、そうしてはじめてシビックプライドが高められる、というのです。様々な社会課題、地域が抱える問題を解決し、次世代へむけて持続的に幸福感を抱けるまちへ変えていくことによって、市民の満足、ひいてはシビックプライドの高揚につながると考えられるのです。

 

 このことはまた、市民と行政が一体となって、未来志向で歩んでいくことが不可欠だといえるでしょう。市民はよりすみよくするために、建設的な意見・要望を積極的に発するとともに、行政は市民の声を傾聴して施策執行へつなげていく、という姿勢が求められるのです。

 

市民参加の先行事例に学ぶ

 

 少し硬い話になりますが、私たちは民主主義と言う政治システムのもとで暮らしています。どこかの国のように、個人の意見や行動が監視され、場合によっては逮捕、監禁されると言った権威主義、独裁主義ではなく、自由に意見を表現できる基本的人権が認められています。日本は、政治参加の低さ、政治家や政党への不信感などの評価が低いため、先進国の中で必ずしも民主主義が成熟しているとは言えません[4]。欧米諸国でも、民主主義だから安心、安定というわけではなく、混乱もあります。しかし、民主主義は生活の豊かさや幸せのために、私たちの意志、要望を表明できる頼れる政治システムと言ってよいと思います。

 

ここで、私たちの生活をより良く、幸せにするには、民主主義は今後どうあるべきなのか少し考えてみましょう。

 

国際政治において地政学的に微妙な位置にありますが、民主主義の成熟度で先行する台湾の事情を一つのお手本として取り上げます。台湾は、コロナ禍初期に、インターネットを駆使した迅速な対応を図ったため、感染拡大を未然に防いだことで知られています。最近では、世界最大の半導体メーカーTSMCが急成長するなど、産業技術が世界最先端にあることでも注目されます。その台湾の政界で活躍するのが、デジタル担当大臣のオードリー・タン(Audrey Tang)さんです[5][6][7]

 

 彼女が目指すのは、デジタル技術を活用した民主主義(デジタル民主主義)です。インターネット接続を市民に広く普及させるとともに、情報を管理・受発信する基盤整備、政治のオープン化・透明化、市民参加の促進を図ったのです。言い換えると、「行政の情報開示(オープン化)」→「市民参加(市民の意見の傾聴とその反映)」→「行政の施策実施」→「検証(誰ひとり取り残さない状況の実現)」というプロセスを、デジタルの利活用によって円滑かつ効率的に実践しようとしているのです。

 

デジタル技術の天才でもある彼女は、技術本位でなく市民の心、意見に耳を傾けることでも才能を発揮しています。「市民のために、から市民とともにへ。それは政治・行政と市民との相互信頼である。」との言葉にそれが表れています。

 

とくに、参加型の政策立案を可能にするしくみ(プラットフォーム)は参考にすべきと思います。市民は、SNSのような感覚で(ハンドルネーム使用可)意見・要望や政策アイデアなどを投稿でき、その結果はすべて公開されます。市民はそうした投稿に対して賛否を示せるようになっており、一定期間に一定数以上の賛同が集まると、行政はそれを取り上げ、政策としての是非を検討しなければならない、というものです。本市でも、公式ホームページ内に意見・要望フォームがあり、市民の声を集めるしくみはありますが、台湾のこのシステムは、市民と行政との関係が密接で、市民の要望が反映されやすい実効的なものだと言えるでしょう。

 

デジタル化は着実に進展している?

 

 世界デジタル競争力ランキングというデータがあります[8]。それによると、主要64か国中で日本は32位と、アジアの中でシンガポール(3位)、韓国(6位)、台湾(9位)、などに比べかなり低い結果です。低位の要因は、国際経験、企業の俊敏性、ビッグデータ分析・活用、デジタルスキルがほぼ最下位であるためですが、納得の結果かもしれません。ただ、スマホの普及、学校へのタブレットPC配布、ネットコンテンツの多様化・拡大、など最近の変化は急激で、デジタル化は市民生活に不可欠なものになってきていると痛感します

 

 政府は、2020年にデジタル庁を設置し、デジタル社会の実現に向けた重点計画を策定しました。この計画では、デジタル化による成長戦略、公共分野のデジタル化、地域の活性化、デジタル人材の育成など、様々な分野での施策を展開しています。こうした政策を受け、地方自治体においても、様々な先進的取り組みが報告されています。

 

 そう、デジタル化の波は、知らないうちに確実に押し寄せてきています。こんな話があります。茨城県は魅力度でいつも最下位という良くないレッテルを張られていますが、都道府県別のデジタル度を示すDCI(デジタル・ケイパビリティ・インデックス)では、福井県、東京都に次ぐ第3位(2022年)なのです[9]。知事のリーダーシップによるところが大きいと推測されますが、デジタル化・DX(デジタル・トランスフォーメーション)を通して、魅力ある「新しい茨城県」の実現を目指す姿勢を応援したいです。他にも、県内では先進的取り組みが複数報告されています。東海村の例[[10][11]では、AI活用による業務効率化、スマホの利用拡大とリテラシー教育など、素晴らしい取り組みです。

 

 本市では、「ひたちなか市デジタル化推進指針」を令和4年(2022年)2月に策定しています[12]。これは、政府が策定した自治体DX推進計画に基づき、市民サービスの向上や地域の発展などをデジタル化によって図ろうとするものです。上述したように、デジタル化はこれからの私たちの生活に密着した存在になってきていますが、社会課題の解決や地域の発展に貢献するとともに、私たち市民の多様な幸せを実現するために無くてはならない手段と言えます。

 

 各種イベントに参加し、人との交流を楽しむこと、様々な社会課題解決に貢献すること、など市民がまちづくりのために取り組める活動は多様です。私たちグループでも、市立図書館の建て替えを契機とした憩いと賑わいのあるウォーカブルなまちなかの実現、市内のどこからでも行きたい所へ自由に行ける公共交通機関ネットワークの構築、海浜公園やおさかな市場などを含む快適なビーチリゾートの創生、などの提言活動に取り組んでいます。それらを前進させるには、一人でも多くの市民の皆さんと協同して創り上げていく(協創)のため、活動の輪を広げていくことが肝要と思っています。デジタル化はその際に極めて有効かつ必須の手段と再認識しています。行政の皆さまには、そうした市民活動におけるデジタル化への対応を、負担や重荷と捉えず、市民の幸せのために積極的に利活用していただきたいと望みます。

 

まとめ

 

 より住みよいまちづくりのために市民参加型の活動が大切であるとともに、活動を未来志向で持続的なものにしていくことがシビックプライドを高めるための鍵であることを述べました。さらに、そうした市民参加型でまちづくりを推進するには、デジタル技術が欠かせないことに言及しました。

 

物価高騰、賃金低迷、生活費圧迫で、まちづくりのことなど考えている余裕はないというのが多くの市民の皆さんの実態かもしれません。 日本経済はコロナ禍を経て、上向き基調にあるものの、少子高齢化の問題も解決策が見いだせず、何となく将来不安がぬぐえない日々かもしれません。しかし、人生は一度きり。思い残すことの無いようにしたいし、やっておけばよかった、など悔やみたくないですよね。これからの暮らしをまえむきに、より幸せなものへ変えていこうと新たなことへ挑戦したいと思いませんか? ここで述べた、市民参加とデジタル化による私たちの日々の暮らしの改革、まちづくりの大切さの再確認、をもう一度皆さんとともに共有したいと願っています。

 

末筆ながら、自分の気持ち、希望、欲望をもっと表に出しませんか? 調和や秩序を乱したらいけない、他人はそんなこと考えていないと思うから言えない、など自分の気持ちを押し殺さないで良いのです。自然で自由な、心の中のこうありたい希望、叫びを押さえつけず、素直に表現しましょう。もしこのブログに共感を覚えたら、是非コメントをお願いします。率直な批判や反論も歓迎です。

 

■関連ブログ

 

地方創生  ·  2021/02/09

シビックテック:地域の課題解決に市民自らIT(情報技術)を使って取り組むこと

 

ひたちなか市の情報  ·  2022/03/31

市民の願いや意志をもっと市政へ反映させたい!

 

■参考資料

[1] シビックプライド(ひたちなか市公式ウェブサイト)

https://www.city.hitachinaka.lg.jp/shisei/keikaku/1001676/1009530/index.html

 

[2]げんきNETひたちなか

https://www.genkinet-hitachinaka.jp/

 

[3] ふれあい・いきいきサロン

https://www.hitachinaka-syakyo.or.jp/publics/index/160/

 

[4] 日本の「民主主義度」は世界で21位 英機関がランキング発表...台湾や韓国の結果は?

https://www.j-cast.com/2021/02/07404559.html?p=all

 

[5] 「相互信頼が基盤」、オードリー・タン氏が進める台湾のデジタル民主主義とはhttps://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01806/100800004/

 

[6] 市民が解決策を出し合う...オードリー・タンが語る「台湾型熟議民主主義」

https://voice.php.co.jp/detail/8965

 

[7] オードリー・タンが語るデジタル民主主義(NHK出版新書) 大野和基【インタビュー・編】

ISBN9784140886700

 

[8] 【国際】IMD世界デジタル競争力ランキング2023、日本は32位で凋落止まらず。他のアジア勢は上位

https://sustainablejapan.jp/2023/12/16/world-digital-competitiveness-ranking-2023/97916

 

[9]IT魅力度高い茨城県へ、RPAで「7.5万時間」削減、意外とスゴイ自治体DXの全貌

https://www.sbbit.jp/article/cont1/131984

 

[10茨城県東海村の「職員・住民」が最先端と言えるワケ、IT企業顔負けの自治体改革の全貌

https://www.sbbit.jp/article/cont1/131238

 

[11]12680時間の業務量削減も? 茨城県東海村の「地道なDX」が生んだ衝撃の効果

https://www.sbbit.jp/article/cont1/131237

 

[12]ひたちなか市デジタル化推進指針

https://www.city.hitachinaka.lg.jp/shisei/keikaku/1001732/1009276.html